目に見える資産を全部合わせても、それで会社はできあがらない。
会社の持つ資産は、会社のために利益をあげようとして働く人たちによって有効に活用されなければならない。
会社と彼らを結ぶものは契約である。
同様に、会社は、取引の相手となる他の会社や人と無数の契約を結ぶ。
契約に沿って、カネやモノが流れる。
目に見える資産、見えない契約が結合して、全体として会社を形成する。
その中心に株主がいる。
会社の資産は、すべて、株主の持ち物であり、会社が結んだ契約がもたらす損得は、すべて、最終的に株主に帰する。
実際に商談を進めるのは社員で、契約書に署名するのは代表取締役である。
しかし、その社員や取締役が辞めたり、亡くなったりしても、契約は残る。
だから、取引の相手方は安心して契約を結べる。
これは、経済の単位として優れた特性である。
株式会社の結んだ契約の効果は、すべて、最終的に株主に帰すると言ったが、実は、株主のリスクは限定されている。
株主は、出資した資金以上の責任を負う必要はない。
あなたが株主である会社が、無謀な経営で破綻して、整理してみたら莫大な借金が残った、とする。
あなたの株の価値はゼロになり、株を買った金は丸損になる。
しかし、それ以上の負担は一切生じない。
これを、有限責任と言う。
株式会社の社名の英語表記の末尾にltd.と附されていることがある。
limited(限定された)の略で、「責任が限定されている」「有限責任である」という意味である。
株主の有限責任は、経済の発展にとって非常に重大な意味を持っている。
経済は、新しい事業が次々に生まれることによって発展する。
新しい事業は、アイデアと行動力と資金が合体しなければ生まれない。
知性と勇気とカネ、と言ってもいい。
しかし、この要素を兼ね備えている人間は滅多にいない。
かつて、経済は、そういう稀有な天才が現れるたびに、少しずつ発展したのである。
それまで農業中心の経済が営まれていた大航海時代のヨーロッパを例に取ろう。
資金を持っているのは地主である。
農園の経営しか経験のない地主は、インド貿易が儲かると聞かざれても、おいそれと手は出せない。
船の見立てができないから、ボロ船を掴まされてしまうかもしれない。
航海術の知識もない。
何より、農園を留守にして、もしかしたら帰って来られないかもしれない航海に乗り出す勇気は、到底、持てないであろう。
事業を行うことは、さまざまなリスクを伴う。
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